想像できる未来しか、実現できない

「具体的に想像できないことは実現できない」——この言葉は、アメリカの自己啓発作家ナポレオン・ヒルの思想にも通じるものがあります。彼は「思考は現実化する(Think and Grow Rich)」の中で、明確な目標を持ち、それに向かって行動することの大切さを説いています。

この考え方は、企業の事業計画や中期戦略を立てるときにも当てはまります。現状の延長線上で未来を描く方法と、今の延長では到底たどり着けないような非線形な未来を思い描く方法。どちらを選ぶかで、結果は大きく変わってきます。

もちろん、非線形な未来を描くことにはリスクもあります。目標が高すぎて、現実味がないと感じることもあるでしょう。でも、その高い目標に向かって努力する過程で、現状の延長では到底得られなかった成果が生まれることがあるのです。


「新幹線方式」:夢のスピードが生んだ技術革新

1964年、東京オリンピックに合わせて開業した東海道新幹線は、まさに非線形な発想から生まれたプロジェクトでした。当時の鉄道の最高速度は時速100キロ台。それを一気に250キロに引き上げ、東京〜新大阪間を高速で結ぶという、当時としては夢のような目標が掲げられました。

この目標を実現するために、開発チームは従来の延長では考えられなかった数々の新技術を生み出しました。たとえば、車両の空力設計、線路の継ぎ目の長さの最適化、そして複数の高速列車を正確に制御するための自動列車制御装置(ATC:Automatic Train Control)などです。

もしこの「250キロ」という大胆な目標がなければ、これらの技術は生まれなかったかでしょうし、世界に誇る高速鉄道網の礎も築かれなかったでしょう。


アポロ計画:月を目指したからこそ生まれた技術

1960年代、宇宙開発競争の中でアメリカはソビエトに後れを取っていました。そんな中、ジョン・F・ケネディ大統領は「10年以内に人類を月に送る」と宣言します。これもまた、当時としては非現実的とも思える目標でした。

NASAはこの目標を実現するために、数々の新技術を開発しました。その中のひとつが「月面での通信技術」です。地球から約38万キロ離れた月面とリアルタイムで通信するために、NASAは深宇宙ネットワーク(Deep Space Network)を構築しました。これは現在でも火星探査などに使われている重要なインフラです。

このように、非線形な目標があったからこそ、今の私たちの生活にもつながる技術が生まれたのです。


想像力が未来をつくる

現状の延長線上で考えることは安心感があります。でも、そこから一歩踏み出して、少し先の未来を「具体的に」想像してみること。そこにこそ、革新の種があるのではないでしょうか。


Innovation Driven by Bold Goals

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