トヨタ生産方式 ~ 脱規模の経営を目指して ~

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1985年、私が新卒入社した会社では、当時トヨタ生産方式を導入している真っ最中で、工場実習ではひたすら「かんばん」に使う棚を段ボールで作らされました。

その横で、普段は部下に恐れられている工場の管理職が、社外から来るトヨタ生産方式の「先生」にボロクソに怒鳴りつけられていた光景が記憶に残っています。
おかげで「トヨタ生産方式」イコール「おっかない先生」のイメージが植え付けられましたが、同時に、そうまでされても取り入れようとしている「トヨタ生産方式」とは何だ、と段ボールをカッターで切りながら興味を持ちました。

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「トヨタ生産方式 ~ 脱規模の経営を目指して ~」
著者 大野 耐一氏
元トヨタ自動車工業(現、トヨタ)副社長

世界の工業生産に大きな影響を与えた「トヨタ生産方式」の生みの親、大野 耐一氏が、この生産方式を確立した後、その根本を流れる理念や発想を、体系的にまとめたものが本書です。

1978初版発行、今も店頭に並んでいるバイブル的な本です。


本書の取り組み方ですが、
「トヨタ生産方式」の「しくみ」は知っているという方は、その根底に流れる考えを知る上で、この本を読むと良いと思います。
また、初学者の方にとってはやや抽象的なのでとっつきにくいかもしれませんが、手元に置いて、事あるごとに読み返して内容を確認していけば力が付くと思います。

「トヨタ生産方式」は、その対象とする生産方式が、製品の種類は多いが一度に作る量は少ないという「多種少量生産」です。
日本の製造業の多くが該当します。

トヨタも当時、「カローラ」が画一的なモデルから多品種に変わる時期でした。
そしてそれに対応するために、生産ライン構築の新たな考え方を確立し、それに伴い様々な工夫がなされ、その集大成が「トヨタ生産方式」となったのです。

その目的は「企業のなかからあらゆる種類のムダを徹底的に排除することによって生産効率を上げよう」というものです。

ただし、この本にも書かれていますが、キーワードとして有名な「かんばん」、「にんべんの自働化」とかを形だけ真似ても、本質的な改善には繋がりにくく、その意味で目的とする

ものや思想をまずしっかりと理解することが必要となります。


各章の内容は以下の通りです。

■第一章 ニーズからの出発
戦後、トヨタが直面した時代の現実への対応を時系列で述べつつ、トヨタ生産方式の本質「徹底した無駄の排除」を説明しています。

そしてそれを貫く日本の柱
  (1) 「ジャスト・イン・タイム」
  (2) 「自働化」
について説明しています。

■第二章 トヨタ生産方式の展開
この章は、第一章で述べたトヨタ生産方式の柱を支える「かんばん」という手段にを中心に、トヨタ生産方式の「キモ」が最もページを割いて説明されています

■第三章 トヨタ生産方式の系譜
戦後の荒廃から立ち直り、アメリカに「追いつけ、追い越せ」を旗印に、復興に全力を注いだ日本。トヨタも例外ではなく、その中でどのようにトヨタ生産方式にたどり着いたかを解説しています。

■第四章 フォード・システムの真意
ヘンリー・フォードと言えばフォード自動車の創設者であり、「T型フォード」と言えば「大量生産」が思い浮かぶほど、「(少品種)大量生産」のイメージがあります。
しかしここではその大局を行く「多種少量生産」のトヨタが、フォードの生産方式の「心」を紐解き、「トヨタ生産方式」に通じる部分もあることを述べています。

■第五章 低成長時代を生き抜く
ロボットやオートメーション設備で、工数さえ減らす単なる「省力化」を実現すれば原価低減ができるという考え方は間違いであり、「自働化」することで「省力化」ではなく「精進化」実現しなくては、低成長時代を乗り切れない、という考えを説明しています。


この本を読むメリットは、前述のように「トヨタ生産方式」の正しい理解を得られること。

一方デメリットは、文章が多く、実例があまりないので、実感がわきにくいところです。ここは大野氏も「まえがき」で述べています。こういったところは、今では「トヨタ生産方式」の解説本や実践本が数多く出回っている(マンガ本もあります)ので、そちらを参考にできます。

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